ヴァイオリン弦のレビュー

おすすめのヴァイオリン弦

ヴァイオリン弦には近年最も主流とされている「ナイロン弦」を中心に、「ガット弦」「スチール弦」など種々の芯材が用いられたものが発売されています。

オーソドックスなものではトマスティーク社(オーストリア)のナイロン弦「ドミナント」、それらを発展させた性質の「インフェルド」や「ペーターインフェルド」、またピラストロ社(ドイツ)の「エヴァピラッツィ」「オブリガート」、ガット弦では「オリーブ」などが良く使用される人気の弦です。

こちらのコラムでは、実際に使用したことのある弦の主な印象を書かせていただきたいと思います。楽器との相性からのおすすめや、音色や演奏感についてレビューします。

―トマスティーク・インフェルド社 Thomastik-Infeld―

ドミナント Dominant

ナイロン弦黎明期、初発の弦です。どの楽器に張っても相性が合いやすく、楽器の素の音を引き出すような印象の弦です。芯材にペルロン(ナイロン素材)を使用し、ガット弦にも近い暖かい音色です。多くの著名な演奏家が使用していることからも、この弦の性能の高さが伺えます。D線には巻き線が2種類(シルバーとアルミ)あり、好みに応じて使い分けができるようになっています。E線にはアルミ巻・スチールのものあり、4弦セットで使うこともできます。

インフェルド赤・青 Infeld Red, Blue

力強い印象のレッドと、明瞭で明るいブルーの2つのラインナップで発売されている弦です。ドミナントよりも若干張力が強く、より音の芯を出したい場合などに有効と思います。レッドは太く重厚な印象、ブルーはタイトで明るい印象です。ブルーは同社のヴィジョンと傾向がやや近いと感じました。G線のみレッドの方がやや高い張力設計になっているようです。いずれもA~G線はいずれもハイドロニウム巻、E線はレッドは金メッキ、ブルーはスズメッキです。

ペーターインフェルド Peter Infeld

音の輪郭がはっきりとした力強い音色の弦です。張力はインフェルド赤・青よりも強く、重厚な造りの楽器と相性が合うと思います。ドミナントで鳴り切る楽器と合わせた場合は、音が詰まったような振動が自然ではない印象になることがあると感じました。D線はシルバーとアルミの2種類の巻き線があります。E線はプラチナ、ゴールド、スズメッキから選べ、いずれも高めの張力設定でやや硬質ですが、芯のある音色です。A~G線の寿命(交換頻度の目安)はドミナント・ヴィジョンなどよりもおよそ2倍程度持つように感じます。

ヴィジョン Vision

クリアで柔らかく、フォーカスされた明瞭な音色の弦です。どの楽器にもオールマイティーに合うとは言えませんが、相性が合えば発音・反応も良く、弾きやすい弦と感じました。比較的音が広がるような鳴り方をする楽器の場合に、音を収束させる効果があると感じます。張力はA・D線はドミナントと同程度、G線はインフェルドブルーと同程度のようです。なお、D線はシルバーとアルミの巻き線から選択可能、E線はスズメッキです。

ヴィジョン・ソロ Vision Solo

ヴィジョンを重厚な感じにして、響きを持たせたような印象の弦です。暖かい音色の弦で、ドミナントの傾向にも似ていると感じました。データー上でもヴィジョンよりもやや張力が強く、厚みのある力強い音色を求める場合にも、好印象になると思います。ヴィジョンと同様に、D線にはシルバーとアルミの巻き線があり、E線はスズメッキです。

ドミナント・プロ Dominant Pro

ドミナント発売50周年あたる、2021年に発売された弦です。暖かみのある音色で弓圧の許容範囲も広く、音楽的な表現が付けやすい良い弦と感じました。インフェルド・レッドと少し似た傾向で、張ってから弦が定着するまでは、2,3日程度です。価格もそれほど高くなく、コスト面でもメリットがありそうです。寿命はインフェルドと同程度と感じました。

―ピラストロ社 Pirastoro―

エヴァピラッツィ Evah Pirazzi

はっきりとした音の輪郭、深い音色が特徴で、トマスティーク社の弦とはまた違った良さがあります。張力はペーターインフェルドよりも強く、ドミナントなどで鳴り切らない楽器と合わせれば、深みのある音を引き出してくれます。相性が合わない楽器に張ると、きつい音に感じたり鳴りがかえって落ちたような印象になる場合があると感じました。E線は金メッキ、スチール、プラチナメッキの3種類で、金メッキ線にはゲージが2種類(0.26と0.27)用意されています。

オブリガート Obligato

ガット弦の音色を目指して開発されたナイロン弦で、発売当初(2000年頃)話題になりました。深みのある音色で、繊細な表現も出しやすい印象です。張力バランスはA線が強く、G線が弱めになっているようで、ドミナント・ヴィジョンなどの弦が合わない場合、オブリガートと相性が合うと感じる場合があるかもしれません。E線は金メッキ線です。

エヴァピラッツィ・ゴールド Evah Pirazzi Gold

エヴァピラッツィとオブリガート、それぞれの良さを併せ持ったような弦です。高価ですが、それに頷ける良い弦と思います。G線はゴールド巻が標準のラインナップですが、シルバー巻も用意されており、張力の面ではシルバー巻の方が高めになっています。E線はステンレス線で高寿命、A~G線の寿命はドミナントよりは長く、ペーターインフェルドよりは少し短いように感じます(エヴァピラッツィ・オブリガートと同程度)。

ヴィオリーノ Violino

低めの張力設定のため、繊細な造りの楽器と相性が合う傾向にある弦です。上述のオブリガートなどを張って音が伸びずに詰まる場合など、相性が合えば価格も手頃で扱いやすい弦と思います。寿命も上述の3種類の弦と同程度です。

パーペチュアル Perpetual

同社最大テンションの弦です。サブ楽器に張って使用しましたが、重厚な造りの楽器のためか相性が非常に良く合いました。エヴァピラッツィよりも太い音色で、落ち着きもありアンサンブルでも調和を乱しにくいと感じました。標準的な板の強さの楽器に張ると、音が詰まって鳴りがかえって落ちるような印象になると思います。

オリーブ Olive

芯材に天然素材のガットを使用した弦です。ナイロン弦にはない音色で表現の幅も広く、ボーイングによって音色をコントロールすることが可能です。ややヴィルトゥオーゾ向けの弦で、音程やチューニングが不安定になりがちですが、楽器・奏法との相性が合えば、美しい音色を引き出すことができる弦と感じます。また、巻き線やゲージのラインナップは最も豊富で、D・G線は巻き線の金素材の配合率が高いリジットが最高級とされています。高価ですが寿命(交換頻度の目安)は標準的で、エヴァピラッツィなどと同程度と感じます。

パッシオーネ Passione

上述のオリーブの音程の不安定さを極力改良させた、画期的な弦と思います。温湿度などの環境の変化の影響を受けにくいため、扱いやすさはナイロン弦とそれほど変わらない印象です。ゲージ(太さ)も豊富にありますので、好みに合わせて選択可能です。なお、寿命はオリーブと同程度で標準的と思います。

― E線 E-String―

ゴールドブラカット Goldbrokat

ドイツのオプティマ社(Optima)社のE線です。弦の直径に応じて0.25、0.26、0.27ゲージの3種類が発売されています(0.26mm:標準、0.25mm:細め、0.27mm:太め)。プレーンな音色で扱いやすい弦と思います。「ゴールドブラカット・プレミアム」も近年発売され、こちらはスチール、金メッキ、ブラスメッキの3つのラインナップがあります。スチールは通常のブラカットよりもしっかりとした音色で、芯の強さが魅力です。また金メッキは華やかさ、ブラスメッキは柔らかさが加えられる印象です。ブラスはメッキが比較的早く剥がれてしまいますが、金メッキ・スチールは耐久性十分かつ高品質で、お勧めし易いE線と思います。

ゴールド Gold

ピラストロ社のガット弦「ゴールド」のE線です。A~G線も発売されていますが、E線のみ使用されることが多いと感じます。プレーンスチールでゲージは0.26mm。上述のゴールドブラカットに似た印象ですが、こちらのゴールドの方が少し太めで力強い印象の音色・弾き心地です。耐久性はノーマルのゴールドブラカットよりは長いと感じました。

ゴールデンスパイラル・ソロ GoldenSpiral Solo

アメリカのダダリオ(D'Addario)社のE線です。カーボンスチールにスズメッキの弦で、細身ながら高音域がよく伸びると感じます。特にガット弦との相性がよく、オリーブなどと合わせると演奏効果が上がると感じます。

*情報は適宜、追加掲載していく予定です(最終更新 2023年7月15日.パーペチュアルを追加)

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ヴァイオリン弦には近年最も主流とされている「ナイロン弦」を中心に、「ガット弦」「スチール弦」など種々の芯材が用いられたものが発売されています。

オーソドックスなものではトマスティーク社(オーストリア)のナイロン弦「ドミナント」、それらを発展させた性質の「インフェルド」や「ペーターインフェルド」、またピラストロ社(ドイツ)の「エヴァピラッツィ」「オブリガート」、ガット弦では「オリーブ」などが良く使用される人気の弦です。

こちらのコラムでは、実際に使用したことのある弦の主な印象を書かせていただきたいと思います。楽器との相性からのおすすめや、音色や演奏感についてレビューします。

―トマスティーク・インフェルド社 Thomastik-Infeld―

ドミナント Dominant

ナイロン弦黎明期、初発の弦です。どの楽器に張っても相性が合いやすく、楽器の素の音を引き出すような印象の弦です。芯材にペルロン(ナイロン素材)を使用し、ガット弦にも近い暖かい音色です。多くの著名な演奏家が使用していることからも、この弦の性能の高さが伺えます。D線には巻き線が2種類(シルバーとアルミ)あり、好みに応じて使い分けができるようになっています。E線にはアルミ巻・スチールのものあり、4弦セットで使うこともできます。

インフェルド赤・青 Infeld Red, Blue

力強い印象のレッドと、明瞭で明るいブルーの2つのラインナップで発売されている弦です。ドミナントよりも若干張力が強く、より音の芯を出したい場合などに有効と思います。レッドは太く重厚な印象、ブルーはタイトで明るい印象です。ブルーは同社のヴィジョンと傾向がやや近いと感じました。G線のみレッドの方がやや高い張力設計になっているようです。いずれもA~G線はいずれもハイドロニウム巻、E線はレッドは金メッキ、ブルーはスズメッキです。

ペーターインフェルド Peter Infeld

音の輪郭がはっきりとした力強い音色の弦です。張力はインフェルド赤・青よりも強く、重厚な造りの楽器と相性が合うと思います。ドミナントで鳴り切る楽器と合わせた場合は、音が詰まったような振動が自然ではない印象になることがあると感じました。D線はシルバーとアルミの2種類の巻き線があります。E線はプラチナ、ゴールド、スズメッキから選べ、いずれも高めの張力設定でやや硬質ですが、芯のある音色です。A~G線の寿命(交換頻度の目安)はドミナント・ヴィジョンなどよりもおよそ2倍程度持つように感じます。

ヴィジョン Vision

クリアで柔らかく、フォーカスされた明瞭な音色の弦です。どの楽器にもオールマイティーに合うとは言えませんが、相性が合えば発音・反応も良く、弾きやすい弦と感じました。比較的音が広がるような鳴り方をする楽器の場合に、音を収束させる効果があると感じます。張力はA・D線はドミナントと同程度、G線はインフェルドブルーと同程度のようです。なお、D線はシルバーとアルミの巻き線から選択可能、E線はスズメッキです。

ヴィジョン・ソロ Vision Solo

ヴィジョンを重厚な感じにして、響きを持たせたような印象の弦です。暖かい音色の弦で、ドミナントの傾向にも似ていると感じました。データー上でもヴィジョンよりもやや張力が強く、厚みのある力強い音色を求める場合にも、好印象になると思います。ヴィジョンと同様に、D線にはシルバーとアルミの巻き線があり、E線はスズメッキです。

ドミナント・プロ Dominant Pro

ドミナント発売50周年あたる、2021年に発売された弦です。暖かみのある音色で弓圧の許容範囲も広く、音楽的な表現が付けやすい良い弦と感じました。インフェルド・レッドと少し似た傾向で、張ってから弦が定着するまでは、2,3日程度です。価格もそれほど高くなく、コスト面でもメリットがありそうです。寿命はインフェルドと同程度と感じました。

―ピラストロ社 Pirastoro―

エヴァピラッツィ Evah Pirazzi

はっきりとした音の輪郭、深い音色が特徴で、トマスティーク社の弦とはまた違った良さがあります。張力はペーターインフェルドよりも強く、ドミナントなどで鳴り切らない楽器と合わせれば、深みのある音を引き出してくれます。相性が合わない楽器に張ると、きつい音に感じたり鳴りがかえって落ちたような印象になる場合があると感じました。E線は金メッキ、スチール、プラチナメッキの3種類で、金メッキ線にはゲージが2種類(0.26と0.27)用意されています。

オブリガート Obligato

ガット弦の音色を目指して開発されたナイロン弦で、発売当初(2000年頃)話題になりました。深みのある音色で、繊細な表現も出しやすい印象です。張力バランスはA線が強く、G線が弱めになっているようで、ドミナント・ヴィジョンなどの弦が合わない場合、オブリガートと相性が合うと感じる場合があるかもしれません。E線は金メッキ線です。

エヴァピラッツィ・ゴールド Evah Pirazzi Gold

エヴァピラッツィとオブリガート、それぞれの良さを併せ持ったような弦です。高価ですが、それに頷ける良い弦と思います。G線はゴールド巻が標準のラインナップですが、シルバー巻も用意されており、張力の面ではシルバー巻の方が高めになっています。E線はステンレス線で高寿命、A~G線の寿命はドミナントよりは長く、ペーターインフェルドよりは少し短いように感じます(エヴァピラッツィ・オブリガートと同程度)。

ヴィオリーノ Violino

低めの張力設定のため、繊細な造りの楽器と相性が合う傾向にある弦です。上述のオブリガートなどを張って音が伸びずに詰まる場合など、相性が合えば価格も手頃で扱いやすい弦と思います。寿命も上述の3種類の弦と同程度です。

パーペチュアル Perpetual

同社最大テンションの弦です。サブ楽器に張って使用しましたが、重厚な造りの楽器のためか相性が非常に良く合いました。エヴァピラッツィよりも太い音色で、落ち着きもありアンサンブルでも調和を乱しにくいと感じました。標準的な板の強さの楽器に張ると、音が詰まって鳴りがかえって落ちるような印象になると思います。

オリーブ Olive

芯材に天然素材のガットを使用した弦です。ナイロン弦にはない音色で表現の幅も広く、ボーイングによって音色をコントロールすることが可能です。ややヴィルトゥオーゾ向けの弦で、音程やチューニングが不安定になりがちですが、楽器・奏法との相性が合えば、美しい音色を引き出すことができる弦と感じます。また、巻き線やゲージのラインナップは最も豊富で、D・G線は巻き線の金素材の配合率が高いリジットが最高級とされています。高価ですが寿命(交換頻度の目安)は標準的で、エヴァピラッツィなどと同程度と感じます。

パッシオーネ Passione

上述のオリーブの音程の不安定さを極力改良させた、画期的な弦と思います。温湿度などの環境の変化の影響を受けにくいため、扱いやすさはナイロン弦とそれほど変わらない印象です。ゲージ(太さ)も豊富にありますので、好みに合わせて選択可能です。なお、寿命はオリーブと同程度で標準的と思います。

― E線 E-String―

ゴールドブラカット Goldbrokat

ドイツのオプティマ社(Optima)社のE線です。弦の直径に応じて0.25、0.26、0.27ゲージの3種類が発売されています(0.26mm:標準、0.25mm:細め、0.27mm:太め)。プレーンな音色で扱いやすい弦と思います。「ゴールドブラカット・プレミアム」も近年発売され、こちらはスチール、金メッキ、ブラスメッキの3つのラインナップがあります。スチールは通常のブラカットよりもしっかりとした音色で、芯の強さが魅力です。また金メッキは華やかさ、ブラスメッキは柔らかさが加えられる印象です。ブラスはメッキが比較的早く剥がれてしまいますが、金メッキ・スチールは耐久性十分かつ高品質で、お勧めし易いE線と思います。

ゴールド Gold

ピラストロ社のガット弦「ゴールド」のE線です。A~G線も発売されていますが、E線のみ使用されることが多いと感じます。プレーンスチールでゲージは0.26mm。上述のゴールドブラカットに似た印象ですが、こちらのゴールドの方が少し太めで力強い印象の音色・弾き心地です。耐久性はノーマルのゴールドブラカットよりは長いと感じました。

ゴールデンスパイラル・ソロ GoldenSpiral Solo

アメリカのダダリオ(D'Addario)社のE線です。カーボンスチールにスズメッキの弦で、細身ながら高音域がよく伸びると感じます。特にガット弦との相性がよく、オリーブなどと合わせると演奏効果が上がると感じます。

*情報は適宜、追加掲載していく予定です(最終更新 2023年7月15日.パーペチュアルを追加)

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2022年12月13日