時代とともに変わるピアノ曲!バロックから近・現代までの楽曲を解説

時代とともに変わるピアノ曲

今回のコラムでは、ピアノ曲をバロック・古典派・ロマン派・近現代に分けて解説いたします。
作曲技法やピアノの演奏技術など、時代ごとに異なる楽曲の魅力をご紹介します!

バロック時代

ピアノ音楽の原点となっているのが、バロック時代。バッハ・ヘンデル・スカルラッティなどが活躍した時代です。

この時期は、ハープシコードやチェンバロ、オルガンといった鍵盤楽器が使われていました。鍵盤の数も54ほどだったため、音域が狭い楽曲が主流となっています。

ヘンデル【調子のよい鍛冶屋】

ドイツの作曲家・オルガニストのヘンデルが描いた「ハープシコード組曲」の第5番ホ長調「調子のよい鍛冶屋」。表題の「調子のよい」とは音が調和するという意味があり、鍛冶屋のハンマーがよく響くことからつけられたと言われています。

エア(テーマ)と5つの変奏曲からなり、現代ではピアノで演奏されることが多いです。素朴なテーマを経て、第1変奏から徐々に音が分散されていきます。

16分音符の3連符や32分音符の下降するスケール、さらに右手と左手が交互に入れ替わるなどテクニックも必要な楽曲です。

バッハ【平均律クラヴィーア曲集】

音楽の父と呼ばれるドイツの作曲家・バッハの代表作である「平均律クラヴィーア曲集」は、第1・第2巻からなる曲集です。ピアノコンクールや受験の課題曲としても定番になっていますね。

いずれも第1番ハ長調から始まり、第24番ロ短調まで全ての調による「前奏曲とフーガ」で構成された曲集となっています。

即興的な前奏曲と対位法を主体とする楽曲形式「フーガ」、この2つの組み合わせで1曲とされ、難易度も異なります。

古典派

ベートーヴェンやモーツァルト、ハイドンなどが活躍した時代を、古典派と呼びます。この時代にはソナタ形式が確立され、ピアノソナタや協奏曲といった楽曲が誕生しました。

ピアノの構造も発展し、ベートーヴェンのピアノソナタに見られるように、強弱の差や広い音域、繊細なペダリングなど、演奏法も発展してきました。

ベートーヴェン【自作主題による32の変奏曲WoO.80】

ドイツの作曲家3大Bの一人、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが36歳の時に完成した「自作主題による32の変奏曲ハ短調」。古典的な作曲技法に加えて技巧的な変奏曲は、音楽性も豊かな大作となっています。テーマは4分の3拍子、左手のハ短調主和音から下属調和音への進行が強調され、シャコンヌのような低音の扱い方が特徴。

その後、16分音符の連打が続く第1変奏から音形が左右交互に現れ、次々と展開していきます。第10変奏からは高速パッセージを情熱的に弾く難しい部分です。

さらに、第12変奏に現れるハ長調の穏やかな旋律との対比など、音楽的に弾くことが求められます。オクターブ奏法・アルペジオ・高速スケール・和音の連打・ペダリングといったピアノ演奏に必要なテクニックが全て詰まった楽曲と言えますね。

モーツァルト【ロンドニ長調K.485】

オーストリア出身の天才作曲家・モーツァルトが作曲したピアノの小品です。難易度は中級程度ですが、シンプルで基本的なテクニックが問われる楽曲。

また、当時の弟子、シャルロッテ・フォン・ヴュルベン嬢のために作った曲と言われ、ピアノ学習者向けのような作品でもあります。

ニ長調のテーマを中心に、平行調ロ短調や属調イ長調への転調、メロディラインが左手にも現れるなど、音楽性にも優れた楽曲と言えます。

曲の終盤には偽終止が用いられ、聞き手に「いつ終わる?」と思わせる作風にもモーツァルトの人柄が現れているのでしょう。テーマがニ長調から次々と近親調に転調していく流れも、モーツァルトならではの天才的な発想なのかもしれませんね。

ロマン派

ショパンやシューマン、ブラームス、リスト、メンデルスゾーンなどが活躍していた時代は、ロマン派と呼ばれています。

ロマン派音楽では、作曲家が自らの感情表現を曲に盛り込んだり、形式にとらわれず自由な発想で創ることが主流になりました。

ショパン【バラード第1番ト短調作品23】

ロマン派音楽を語る上で欠かせない作曲家といえば、フレデリック・ショパン!ピアノの詩人と呼ばれるショパンは、その名の通り数多くのピアノ曲を残しています。

バラード第1番ト短調は、初期の代表作。ソナタ形式ですが、自由な曲想が散りばめられているのも魅力的です。レチタティーヴォ風の序奏から始まり、力強いユニゾンからト短調の第1主題を導きます。その後、変ホ長調の第2主題が現れ、ソナタ形式で展開していきます。

コーダは、劇的な「Presto con fuoco」。技術的にも難しい箇所ですが、情熱的で聴き応えのあるクライマックスと言えます。

メンデルスゾーン【ロンドカプリチオーソ作品14】

ドイツの作曲家、フェリックス・メンデルスゾーンが21歳の時に作曲した「ロンドカプリチオーソ・ホ長調」。メンデルスゾーンのピアノ曲の中でも好んで演奏される有名な楽曲です。

序奏-A‐B‐A‐C‐A‐コーダのロンド形式。Andanteの序奏から始まり、Prestoの主部にはホ短調で無窮動風フレーズが出現し、発展しながら第2・第3主題が現れます。

その後、低音域の弱音を経て技巧的なコーダで曲を締めくくります。和声法と対位法が巧みに用いられた独創的な構成で、聴き応えのある楽曲になっています。

近・現代

ラヴェルやドビュッシーなどのフランス印象派、プロコフィエフやショスタコーヴィチなどが活躍した時代が、近・現代に区分されます。

ロマン派よりも自由度が増して、作曲家の個性が強い楽曲が作られるようになりました。さらに、ピアノの演奏技術も向上し、高難易度の楽曲が多数残されています。

ラヴェル【水の戯れ】

フランスの作曲家・モーリス・ラヴェルがパリ音楽院在学中に作曲した「水の戯れ」は、美しい噴水からインスピレーションを得た作品と伝えられています。

ラヴェルは水をイメージした楽曲が多く、「水の戯れ」は古典的なソナタ形式が用いられた作品となっています。そのため、テンポやリズムを揺らさず安定した演奏が求められる曲です。並行和声を多用した斬新な楽曲でありながら、ピアニスティックで精巧に作られていると現代でも高評価を得ています。

16分音符や32分音符の細かいパッセージが水のように絶え間なく流れ、半音階的に動き回り最高潮に達してからの黒鍵のグリッサンドなど、技巧的な部分も多く練習量も必要な難曲。

ラフマニノフ【前奏曲作品3より『鐘』】

ロシア出身の作曲家、セルゲイ・ラフマニノフのピアノ曲の中でも有名な「鐘」は、幻想的小品集に収められている楽曲です。

典型的な3部形式で、冒頭に現れる嬰ハ短調の荘厳な和音が印象的。カデンツァ風の導入部を経て、中間部は3連符が半音階的に絡み合う情熱的なパッセージで盛り上げていきます。

再現部は冒頭の和音を力強く響かせ、7小節のコーダで静かに曲を閉じます。

まとめ

今回は、バロック・古典派・ロマン派・近現代に作られたピアノ曲を解説してきました。

時代背景やピアノの発展は、ピアノ音楽史に大きな影響力があり、それぞれの時代で活躍した作曲家が数多くの名曲を残しています。

歴史を紐解きながら聴いてみると、よりクラシック音楽の奥深さを感じますね。

2023年8月29日 投稿

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バロック時代

ピアノ音楽の原点となっているのが、バロック時代。バッハ・ヘンデル・スカルラッティなどが活躍した時代です。

この時期は、ハープシコードやチェンバロ、オルガンといった鍵盤楽器が使われていました。鍵盤の数も54ほどだったため、音域が狭い楽曲が主流となっています。

ヘンデル【調子のよい鍛冶屋】

ドイツの作曲家・オルガニストのヘンデルが描いた「ハープシコード組曲」の第5番ホ長調「調子のよい鍛冶屋」。表題の「調子のよい」とは音が調和するという意味があり、鍛冶屋のハンマーがよく響くことからつけられたと言われています。

エア(テーマ)と5つの変奏曲からなり、現代ではピアノで演奏されることが多いです。素朴なテーマを経て、第1変奏から徐々に音が分散されていきます。

16分音符の3連符や32分音符の下降するスケール、さらに右手と左手が交互に入れ替わるなどテクニックも必要な楽曲です。

バッハ【平均律クラヴィーア曲集】

音楽の父と呼ばれるドイツの作曲家・バッハの代表作である「平均律クラヴィーア曲集」は、第1・第2巻からなる曲集です。ピアノコンクールや受験の課題曲としても定番になっていますね。

いずれも第1番ハ長調から始まり、第24番ロ短調まで全ての調による「前奏曲とフーガ」で構成された曲集となっています。

即興的な前奏曲と対位法を主体とする楽曲形式「フーガ」、この2つの組み合わせで1曲とされ、難易度も異なります。

古典派

ベートーヴェンやモーツァルト、ハイドンなどが活躍した時代を、古典派と呼びます。この時代にはソナタ形式が確立され、ピアノソナタや協奏曲といった楽曲が誕生しました。

ピアノの構造も発展し、ベートーヴェンのピアノソナタに見られるように、強弱の差や広い音域、繊細なペダリングなど、演奏法も発展してきました。

ベートーヴェン【自作主題による32の変奏曲WoO.80】

ドイツの作曲家3大Bの一人、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが36歳の時に完成した「自作主題による32の変奏曲ハ短調」。古典的な作曲技法に加えて技巧的な変奏曲は、音楽性も豊かな大作となっています。テーマは4分の3拍子、左手のハ短調主和音から下属調和音への進行が強調され、シャコンヌのような低音の扱い方が特徴。

その後、16分音符の連打が続く第1変奏から音形が左右交互に現れ、次々と展開していきます。第10変奏からは高速パッセージを情熱的に弾く難しい部分です。

さらに、第12変奏に現れるハ長調の穏やかな旋律との対比など、音楽的に弾くことが求められます。オクターブ奏法・アルペジオ・高速スケール・和音の連打・ペダリングといったピアノ演奏に必要なテクニックが全て詰まった楽曲と言えますね。

モーツァルト【ロンドニ長調K.485】

オーストリア出身の天才作曲家・モーツァルトが作曲したピアノの小品です。難易度は中級程度ですが、シンプルで基本的なテクニックが問われる楽曲。

また、当時の弟子、シャルロッテ・フォン・ヴュルベン嬢のために作った曲と言われ、ピアノ学習者向けのような作品でもあります。

ニ長調のテーマを中心に、平行調ロ短調や属調イ長調への転調、メロディラインが左手にも現れるなど、音楽性にも優れた楽曲と言えます。

曲の終盤には偽終止が用いられ、聞き手に「いつ終わる?」と思わせる作風にもモーツァルトの人柄が現れているのでしょう。テーマがニ長調から次々と近親調に転調していく流れも、モーツァルトならではの天才的な発想なのかもしれませんね。

ロマン派

ショパンやシューマン、ブラームス、リスト、メンデルスゾーンなどが活躍していた時代は、ロマン派と呼ばれています。

ロマン派音楽では、作曲家が自らの感情表現を曲に盛り込んだり、形式にとらわれず自由な発想で創ることが主流になりました。

ショパン【バラード第1番ト短調作品23】

ロマン派音楽を語る上で欠かせない作曲家といえば、フレデリック・ショパン!ピアノの詩人と呼ばれるショパンは、その名の通り数多くのピアノ曲を残しています。

バラード第1番ト短調は、初期の代表作。ソナタ形式ですが、自由な曲想が散りばめられているのも魅力的です。レチタティーヴォ風の序奏から始まり、力強いユニゾンからト短調の第1主題を導きます。その後、変ホ長調の第2主題が現れ、ソナタ形式で展開していきます。

コーダは、劇的な「Presto con fuoco」。技術的にも難しい箇所ですが、情熱的で聴き応えのあるクライマックスと言えます。

メンデルスゾーン【ロンドカプリチオーソ作品14】

ドイツの作曲家、フェリックス・メンデルスゾーンが21歳の時に作曲した「ロンドカプリチオーソ・ホ長調」。メンデルスゾーンのピアノ曲の中でも好んで演奏される有名な楽曲です。

序奏-A‐B‐A‐C‐A‐コーダのロンド形式。Andanteの序奏から始まり、Prestoの主部にはホ短調で無窮動風フレーズが出現し、発展しながら第2・第3主題が現れます。

その後、低音域の弱音を経て技巧的なコーダで曲を締めくくります。和声法と対位法が巧みに用いられた独創的な構成で、聴き応えのある楽曲になっています。

近・現代

ラヴェルやドビュッシーなどのフランス印象派、プロコフィエフやショスタコーヴィチなどが活躍した時代が、近・現代に区分されます。

ロマン派よりも自由度が増して、作曲家の個性が強い楽曲が作られるようになりました。さらに、ピアノの演奏技術も向上し、高難易度の楽曲が多数残されています。

ラヴェル【水の戯れ】

フランスの作曲家・モーリス・ラヴェルがパリ音楽院在学中に作曲した「水の戯れ」は、美しい噴水からインスピレーションを得た作品と伝えられています。

ラヴェルは水をイメージした楽曲が多く、「水の戯れ」は古典的なソナタ形式が用いられた作品となっています。そのため、テンポやリズムを揺らさず安定した演奏が求められる曲です。並行和声を多用した斬新な楽曲でありながら、ピアニスティックで精巧に作られていると現代でも高評価を得ています。

16分音符や32分音符の細かいパッセージが水のように絶え間なく流れ、半音階的に動き回り最高潮に達してからの黒鍵のグリッサンドなど、技巧的な部分も多く練習量も必要な難曲。

ラフマニノフ【前奏曲作品3より『鐘』】

ロシア出身の作曲家、セルゲイ・ラフマニノフのピアノ曲の中でも有名な「鐘」は、幻想的小品集に収められている楽曲です。

典型的な3部形式で、冒頭に現れる嬰ハ短調の荘厳な和音が印象的。カデンツァ風の導入部を経て、中間部は3連符が半音階的に絡み合う情熱的なパッセージで盛り上げていきます。

再現部は冒頭の和音を力強く響かせ、7小節のコーダで静かに曲を閉じます。

まとめ

今回は、バロック・古典派・ロマン派・近現代に作られたピアノ曲を解説してきました。

時代背景やピアノの発展は、ピアノ音楽史に大きな影響力があり、それぞれの時代で活躍した作曲家が数多くの名曲を残しています。

歴史を紐解きながら聴いてみると、よりクラシック音楽の奥深さを感じますね。

2023年8月29日 投稿

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