ヴァイオリン松脂のレビュー

弓で弦を擦って音を出す「擦弦楽器」

弓には馬の尻尾の毛が張られているのはご存じですか?

モンゴルやカナダ、イタリア原産のWhite Horse(白馬)の毛を洗浄・漂白したものがヴァイオリンを始めヴィオラ・チェロ・コントラバスの弓毛として使用されています。

そのままの弓毛では音は鳴りません。松脂と呼ばれる、Spruce(松)の樹液を溶かして再成形させたものを、毛に塗ることで引っ掛かりを作ります。松脂には、粘度や粒子の荒さなどでタイプ分けされた種々の製品があり、世界各国のメーカーが販売しています。

こちらのレビューでは実際に使用したことのある松脂を挙げ、その特徴・使用感などを記していきたいと思います。主観による部分もありますが、松脂の選定時に少しでも参考になりましたら幸いです。

BERNARDEL(ベルナルデル)

フランス・SAVAREZ(サバレス)社の有名な松脂です。比較的明るい褐色で、粒子のきめが細かいタイプ、中音域から高音域まで、伸びの良い美しい音色が特徴と思います。弓毛への馴染みもよく、多めに塗っても弦への引っ掛かり感が滑ることなく、安定的に演奏する必要がある場面などでも、戸惑うことなく使用することができます。価格が手ごろで、多くの楽器店で入手できる点も魅力です。

GUILLAUME(ギョーム)

ベルギーの弓製作・鑑定家として今や世界的権威となった、Pierre Guillaume監修の松脂です。濃いグリーンの色味のこの松脂は、深い音色を必要とする場面で重宝すると感じます。多量に塗っても松脂が飛散することなく、芯のある重厚な音色を引き出します。明るい色味の松脂で相性が合わない場合は、ギョームのような濃い色味の松脂を試されると良いと思います。半面、この松脂で音が伸びない/籠るような場合は、上記のベルナルデルなどが合いそうです。

MELOS(メロス)

ギリシャ・メロス社の100%ハンドメイド製法の松脂です。ラインナップとして、「ライト」「ダーク」「バロック」の3種類、サイズもミニがあるなど、扱いやすい松脂です。季節に応じて、色味でを使い分けることも有効と思います。滑らかなきめ細かい粒子で、非常に透明感のあるクリアな音色を引き出してくれます。弓圧/弓速の変化にも素早く反応するような俊敏性も特徴的です。

Liebenzeller(リーベンツェラー)

ドイツの老舗、Liebenzeller社の松脂。この松脂の珍しい特徴は、金(Gold)、銀(Silver)、銅(Bronze)の粉末が配合されている点です。またⅠとⅡのラインナップで分けられ、粘度がⅡの方が高くなっています。Ⅰのタイプで3種類使用したことがありますが、金は暖かく丸い音色、銀は厚みのある深い音色、銅はやや表面的な輝かしい音色でした。楽器との相性で使い分けるのが望ましいと思います。音量の面で特に有利な松脂と感じました。

Archet(アルシェ)

国産の製品で愛用者も多い松脂です。ソプラノ・アルト・テノールのラインナップで、可愛らしい布製の収納ケースに入っています。アルシェ社の松脂は、総じて品質が高いと思います。いくつか使用しましたが、製品斑もなくメイドインジャパンの技術力の高さを感じました。滑らかな引っ掛かり感で、クリアな音色、テノールの松脂は深い芯のある音色も魅力です。

Bogaro & Clemente(ボガーロ&クレメンテ)

イタリアのフィッティング・パーツ(ペグ・顎当て・テールピース・エンドピンの4点セット)メーカー、B&C社の松脂です。ヴァイオリン製作時のモルド(木枠)が象られた木製の堅牢なケースに入っています。茶褐色の比較的明るめの色味の松脂で、音の伸びや深みなどバランスが取れていると感じました。多量に塗っても飛散しにくく、安定感のある弾き心地で、どのレヴェルの方でも扱いやすい松脂と思います。

以上、6種類の松脂を挙げてレビューを記しました。ヴァイオリンは、弦や松脂、アジャスターなど小さなパーツでさえも弾き心地・音色に影響が出る、繊細な楽器です。

松脂の選定では、粘度/色味の観点から、もう少し音の抜けをよく/深くという軸で選定されるとよいと思います。さらさらした松脂は音の抜けや飛びがよく、しっとりとした松脂は音色に深みが出ます。

言い換えれば、さらさらした松脂で音がしっかり出ない、浮いたような音になるときは、より濃い色味/粘度の高い松脂が合う可能性があります。しっとりとした松脂で音が籠る、伸びないような場合は、さらさらとしたより薄い色味/粘度の低い松脂が合うと思います。

松脂選定時の分類軸として、参考になりましたら幸いです。

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そのままの弓毛では音は鳴りません。松脂と呼ばれる、Spruce(松)の樹液を溶かして再成形させたものを、毛に塗ることで引っ掛かりを作ります。松脂には、粘度や粒子の荒さなどでタイプ分けされた種々の製品があり、世界各国のメーカーが販売しています。

こちらのレビューでは実際に使用したことのある松脂を挙げ、その特徴・使用感などを記していきたいと思います。主観による部分もありますが、松脂の選定時に少しでも参考になりましたら幸いです。

BERNARDEL(ベルナルデル)

フランス・SAVAREZ(サバレス)社の有名な松脂です。比較的明るい褐色で、粒子のきめが細かいタイプ、中音域から高音域まで、伸びの良い美しい音色が特徴と思います。弓毛への馴染みもよく、多めに塗っても弦への引っ掛かり感が滑ることなく、安定的に演奏する必要がある場面などでも、戸惑うことなく使用することができます。価格が手ごろで、多くの楽器店で入手できる点も魅力です。

GUILLAUME(ギョーム)

ベルギーの弓製作・鑑定家として今や世界的権威となった、Pierre Guillaume監修の松脂です。濃いグリーンの色味のこの松脂は、深い音色を必要とする場面で重宝すると感じます。多量に塗っても松脂が飛散することなく、芯のある重厚な音色を引き出します。明るい色味の松脂で相性が合わない場合は、ギョームのような濃い色味の松脂を試されると良いと思います。半面、この松脂で音が伸びない/籠るような場合は、上記のベルナルデルなどが合いそうです。

MELOS(メロス)

ギリシャ・メロス社の100%ハンドメイド製法の松脂です。ラインナップとして、「ライト」「ダーク」「バロック」の3種類、サイズもミニがあるなど、扱いやすい松脂です。季節に応じて、色味でを使い分けることも有効と思います。滑らかなきめ細かい粒子で、非常に透明感のあるクリアな音色を引き出してくれます。弓圧/弓速の変化にも素早く反応するような俊敏性も特徴的です。

Liebenzeller(リーベンツェラー)

ドイツの老舗、Liebenzeller社の松脂。この松脂の珍しい特徴は、金(Gold)、銀(Silver)、銅(Bronze)の粉末が配合されている点です。またⅠとⅡのラインナップで分けられ、粘度がⅡの方が高くなっています。Ⅰのタイプで3種類使用したことがありますが、金は暖かく丸い音色、銀は厚みのある深い音色、銅はやや表面的な輝かしい音色でした。楽器との相性で使い分けるのが望ましいと思います。音量の面で特に有利な松脂と感じました。

Archet(アルシェ)

国産の製品で愛用者も多い松脂です。ソプラノ・アルト・テノールのラインナップで、可愛らしい布製の収納ケースに入っています。アルシェ社の松脂は、総じて品質が高いと思います。いくつか使用しましたが、製品斑もなくメイドインジャパンの技術力の高さを感じました。滑らかな引っ掛かり感で、クリアな音色、テノールの松脂は深い芯のある音色も魅力です。

Bogaro & Clemente(ボガーロ&クレメンテ)

イタリアのフィッティング・パーツ(ペグ・顎当て・テールピース・エンドピンの4点セット)メーカー、B&C社の松脂です。ヴァイオリン製作時のモルド(木枠)が象られた木製の堅牢なケースに入っています。茶褐色の比較的明るめの色味の松脂で、音の伸びや深みなどバランスが取れていると感じました。多量に塗っても飛散しにくく、安定感のある弾き心地で、どのレヴェルの方でも扱いやすい松脂と思います。

以上、6種類の松脂を挙げてレビューを記しました。ヴァイオリンは、弦や松脂、アジャスターなど小さなパーツでさえも弾き心地・音色に影響が出る、繊細な楽器です。

松脂の選定では、粘度/色味の観点から、もう少し音の抜けをよく/深くという軸で選定されるとよいと思います。さらさらした松脂は音の抜けや飛びがよく、しっとりとした松脂は音色に深みが出ます。

言い換えれば、さらさらした松脂で音がしっかり出ない、浮いたような音になるときは、より濃い色味/粘度の高い松脂が合う可能性があります。しっとりとした松脂で音が籠る、伸びないような場合は、さらさらとしたより薄い色味/粘度の低い松脂が合うと思います。

松脂選定時の分類軸として、参考になりましたら幸いです。

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2023年08月10日