別の作曲家の旋律をモチーフにした、「〇〇の主題による」といったタイトルのついた作品はこれまで多く書かれています。なかでもパガニーニはリスト、シューマン、ブラームス、ラフマニノフなど複数の作曲家にとりあげられています。彼のどんなところが多くの作曲家をひきつけたのか、リストを一例に見ていきましょう。
パガニーニの生涯

ニコロ・パガニーニは1782年イタリアのジェノヴァに生まれました。11歳で最初の公開演奏を行い、13歳の年にヴァイオリニストのロッラに習いますが、既にかなりの腕前だったため、作曲も学ぶようになります。
17歳になる年の演奏旅行では各地で成功をおさめます。しかし若くして成功したせいかギャンブルにふけり、自分の楽器まで失ってしまうこともありました。
作曲家としてのパガニーニはヴァイオリンの高度な技巧を盛り込んだ作品を多く書きましたが、あまりの人間離れした難しさに「悪魔に魂を売った」と噂が流れました。その噂のため、1840年に亡くなってからなかなか埋葬許可が下りず、遺体に防腐処理をほどこされた状態で各地の教会を転々とします。パガニーニの遺体が生地ジェノヴァの共同墓地に安置されたのは1926年のことでした。
【パガニーニとリスト】ヴァイオリンの天才からピアノの天才へ

パガニーニの作品のうち、他の作曲家がモチーフとして一番使用しているのが《24のカプリス》というヴァイオリン独奏曲です。これは彼が20代の頃に書いた作品で、スピッカート、重音奏法、左手のピチカートなど、高度な技術がたくさん含まれています。
リストはパリでパガニーニの演奏を聴いて衝撃を受け、「ピアノのパガニーニになる!」と叫び、新しい演奏技術の開発にはげみます。リストはさらにパガニーニ作品のヴァイオリンのテクニックも研究し尽くしました。その結果生まれたのが、パガニーニの《24のカプリス》と、ヴァイオリン協奏曲を抜粋してピアノ用に編曲した《パガニーニによる超絶技巧練習曲》です。
この作品は当時としては演奏困難な技術が多く要求されたため、難しすぎる箇所を削除した改訂版が《パガニーニ大練習曲》としてのちに出版されました。現在ではこの改訂版が多く演奏されています。
パガニーニは「悪魔に魂を売った」と呼ばれるほどの高度な演奏技術を持ち、それを活かした作品を書いた天才ですが、それをピアノという違う楽器の超絶技巧の作品に高めることが出来たリストもまた天才といえるでしょう。
監修者
稲葉 雅佳(主宰, ヴァイオリン)
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パガニーニの生涯

ニコロ・パガニーニは1782年イタリアのジェノヴァに生まれました。11歳で最初の公開演奏を行い、13歳の年にヴァイオリニストのロッラに習いますが、既にかなりの腕前だったため、作曲も学ぶようになります。
17歳になる年の演奏旅行では各地で成功をおさめます。しかし若くして成功したせいかギャンブルにふけり、自分の楽器まで失ってしまうこともありました。
作曲家としてのパガニーニはヴァイオリンの高度な技巧を盛り込んだ作品を多く書きましたが、あまりの人間離れした難しさに「悪魔に魂を売った」と噂が流れました。その噂のため、1840年に亡くなってからなかなか埋葬許可が下りず、遺体に防腐処理をほどこされた状態で各地の教会を転々とします。パガニーニの遺体が生地ジェノヴァの共同墓地に安置されたのは1926年のことでした。
【パガニーニとリスト】ヴァイオリンの天才からピアノの天才へ

パガニーニの作品のうち、他の作曲家がモチーフとして一番使用しているのが《24のカプリス》というヴァイオリン独奏曲です。これは彼が20代の頃に書いた作品で、スピッカート、重音奏法、左手のピチカートなど、高度な技術がたくさん含まれています。
リストはパリでパガニーニの演奏を聴いて衝撃を受け、「ピアノのパガニーニになる!」と叫び、新しい演奏技術の開発にはげみます。リストはさらにパガニーニ作品のヴァイオリンのテクニックも研究し尽くしました。その結果生まれたのが、パガニーニの《24のカプリス》と、ヴァイオリン協奏曲を抜粋してピアノ用に編曲した《パガニーニによる超絶技巧練習曲》です。
この作品は当時としては演奏困難な技術が多く要求されたため、難しすぎる箇所を削除した改訂版が《パガニーニ大練習曲》としてのちに出版されました。現在ではこの改訂版が多く演奏されています。
パガニーニは「悪魔に魂を売った」と呼ばれるほどの高度な演奏技術を持ち、それを活かした作品を書いた天才ですが、それをピアノという違う楽器の超絶技巧の作品に高めることが出来たリストもまた天才といえるでしょう。
監修者
稲葉 雅佳(主宰, ヴァイオリン)

洗足学園音楽大学音楽学部 弦楽器科ヴァイオリン専攻卒業。
これまでにヴァイオリンを加藤尚子、永峰高志、勅使河原真実の各氏、ヴィオラを古川原広斉氏に師事。在学中よりソロ・オーケストラなどの演奏活動、ヴァイオリン個人指導を開始。古楽器を用いたピリオド奏法、音響学の知見からの効率的な奏法を研究、演奏指導に反映させている。
一般大学卒業後、金融機関の審査担当部門に勤務。30歳手前から音楽大学に進学、特に指導教授法についても学ぶ機会を多く得てきた。
東京国際芸術協会、横浜音楽協会会員、ソノール音楽教室主宰。
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