繊細なボウイングコントロール
ヴァイオリンは音色や音量を自在にコントロールできる楽器です。
囁くような弱音から響き渡る力強い音まで表現の幅が実に広い楽器ですが、それを可能にするのは「弓で弦を擦る位置」「弓の圧力」「弓を動かす速さ」などといった細かなボウイング(運弓)の調整を行っているためです。
日々の練習の中で試行錯誤しながら少しずつ身につけていく技術になりますが、その際の考え方の中心となる「Sound Point(サウンドポイント)」について書かせていただきます。
サウンドポイントと音色・音量の関係
ヴァイオリンは弓で弦を擦る位置、弓と弦の接点「サウンドポイント」で音色・音量が変化します。
具体的には、駒寄りを擦ると力強く大きな音量、指板寄りでは繊細で小さな音量になります。
このように書くと単純ですが、両者の位置を擦るとき、同じ弓速・弓圧ではうまく鳴らすことはできません。前者では遅めの弓速で強めの弓圧、後者は速めの弓速で弱めの弓圧という具合に、ボーイングをコントロールする必要があります。
つまり、サウンドポイントに応じた弓速と弓圧で弾く必要があるわけです。サウンドポイントは「駒寄り」「中間(駒と指板の真ん中)」「指板寄り」や、5つのサウンドポイント(イヴァン・ガラミアンら)に分けて考えることができます。
また、サウンドポイントに応じて必要となる弓速・弓圧は、擦る弦によっても異なります。
細くしなやかなE線は容易に駒寄りを弾くことができますが、太く硬いG線は弓圧をかけて遅めの弓速でないと駒寄りを弾くことはできません。反対にG線は指板寄りを比較的簡単に弾くことができますが、E線は指板の近くでは張りが柔らかすぎて、最小の弓圧かつ速い弓速でないと音が潰れてしまいます。
サウンドポイントはそれらを勘案して「E線では若干駒寄り、G線では若干指板寄り」にすると弾きやすくなります。
*A線とD線はそれらの中間とイメージするとよいでしょう。例えば、4重音の演奏時においては、低弦(G・D線)をやや指板寄りで弾き、高弦(A・E線)に移る時に駒に少し寄せると、無理なくきれいに響きます。
ポジションに応じたサウンドポイント
また、サウンドポイントはポジションによっても調節する必要があります。
ハイポジション時はサウンドポイントを駒寄り付近に設定すると、かすれず芯のある音色で演奏することができます。
これは有効弦長(弦の振動部分の長さ)の影響で、ローポジション時と同じ位置をハイポジション時で擦った場合、相対的に指板寄りを弾くことになるためです。厳密には、ポジションが高くなればなるほど、より弓を駒に寄せて弾くことが可能になります(例えば、3rdポジションより5thポジションの方が駒に寄せることができるなど)。
ガラミアンやアウアー、ディレイなどの教師らもサウンドポイントについてよく言及していたと聞きます。サウンドポイントをうまく捉えた演奏を実現するには、相応の時間がかかります。ヴァイオリンの演奏技術の中でもトップクラスの難易度であることは間違いありません。
普段の音階・エチュードや曲の演奏時にも注意して取り組んでみられることをお勧めいたします。
次の記事
<弓の持ち方 -基本的な発想-
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ボウイング -手首と肘の位置関係-発表会でおすすめのピアノ曲は?初級から上級まで聴き映えする楽曲を解説
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ヴァイオリンレッスンについて繊細なボウイングコントロール
ヴァイオリンは音色や音量を自在にコントロールできる楽器です。
囁くような弱音から響き渡る力強い音まで表現の幅が実に広い楽器ですが、それを可能にするのは「弓で弦を擦る位置」「弓の圧力」「弓を動かす速さ」などといった細かなボウイング(運弓)の調整を行っているためです。
日々の練習の中で試行錯誤しながら少しずつ身につけていく技術になりますが、その際の考え方の中心となる「Sound Point(サウンドポイント)」について書かせていただきます。
サウンドポイントと音色・音量の関係
ヴァイオリンは弓で弦を擦る位置、弓と弦の接点「サウンドポイント」で音色・音量が変化します。
具体的には、駒寄りを擦ると力強く大きな音量、指板寄りでは繊細で小さな音量になります。
このように書くと単純ですが、両者の位置を擦るとき、同じ弓速・弓圧ではうまく鳴らすことはできません。前者では遅めの弓速で強めの弓圧、後者は速めの弓速で弱めの弓圧という具合に、ボーイングをコントロールする必要があります。
つまり、サウンドポイントに応じた弓速と弓圧で弾く必要があるわけです。サウンドポイントは「駒寄り」「中間(駒と指板の真ん中)」「指板寄り」や、5つのサウンドポイント(イヴァン・ガラミアンら)に分けて考えることができます。
また、サウンドポイントに応じて必要となる弓速・弓圧は、擦る弦によっても異なります。
細くしなやかなE線は容易に駒寄りを弾くことができますが、太く硬いG線は弓圧をかけて遅めの弓速でないと駒寄りを弾くことはできません。反対にG線は指板寄りを比較的簡単に弾くことができますが、E線は指板の近くでは張りが柔らかすぎて、最小の弓圧かつ速い弓速でないと音が潰れてしまいます。
サウンドポイントはそれらを勘案して「E線では若干駒寄り、G線では若干指板寄り」にすると弾きやすくなります。
*A線とD線はそれらの中間とイメージするとよいでしょう。例えば、4重音の演奏時においては、低弦(G・D線)をやや指板寄りで弾き、高弦(A・E線)に移る時に駒に少し寄せると、無理なくきれいに響きます。
ポジションに応じたサウンドポイント
また、サウンドポイントはポジションによっても調節する必要があります。
ハイポジション時はサウンドポイントを駒寄り付近に設定すると、かすれず芯のある音色で演奏することができます。
これは有効弦長(弦の振動部分の長さ)の影響で、ローポジション時と同じ位置をハイポジション時で擦った場合、相対的に指板寄りを弾くことになるためです。厳密には、ポジションが高くなればなるほど、より弓を駒に寄せて弾くことが可能になります(例えば、3rdポジションより5thポジションの方が駒に寄せることができるなど)。
ガラミアンやアウアー、ディレイなどの教師らもサウンドポイントについてよく言及していたと聞きます。サウンドポイントをうまく捉えた演奏を実現するには、相応の時間がかかります。ヴァイオリンの演奏技術の中でもトップクラスの難易度であることは間違いありません。
普段の音階・エチュードや曲の演奏時にも注意して取り組んでみられることをお勧めいたします。
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