駒(Bridge) -振動を伝えるパーツ-

楽器ごとに合わせて製作される

ヴァイオリンのBridge) は、弦の振動を表板に伝える役割を持つ重要なパーツです。

写真左端の既製品を使用するのが一般的で、この状態から取り付ける楽器に合わせて、全体の厚みや高さが削られていきます。特に、駒脚を表板にぴたりと合わせて削ったり、ハートマーク部分や脚のくびれ部分の余分な肉厚をそぎ落としたりといったところは、弦楽器職人の方の技術とセンスが表れる部分と感じます。

写真の左が加工前、右の3枚はいずれも加工後の駒です。

ヴァイオリン駒

加工前 (左) と加工後 (右3枚) の駒

メーカーによる材質硬さの違い

右3枚は、以前使用していたヴァイオリンに取りつけてもらったことのあるものですが、それぞれ異なる駒材メーカーのもので、左からオーベルト (Aubert)、ミロスタム (Milo Stamm)、デスピオ (Despiau) 社製です。

いずれも木材自体は楓材(メープル)で同じですが、各メーカーごとに材質の硬さに違いがあり、オーベルトを標準とするとデスピオはそれよりもやや硬く、ミロスタムはさらに硬い材質を使用していると聞きました。実際に触った質感でも、それを感じ取ることができるほどの違いがあります。

楽器本体との均整を取る

ヴァイオリン本体の木材(表板や裏板等)も材質の硬度が音色に反映されますが、駒材に関しても同様で、柔らかい材質は柔らかい音、硬い材質は硬い音になる傾向にあります。例えば、楽器本体の素性が硬質な音色の場合、柔らかい材質の駒を合わせ、反対に柔らかい音色の楽器の場合には硬めの材質の駒を合わせるなど、反する性質同士を合わせることで均整を取ることができると感じたことがあります。

また、材質だけでなく高さや厚みによっても、弦の押さえやすさはもちろん、弾き心地などにも影響を与えます。駒の高さについては、単に「低ければ / 高ければ弾きやすい」というものではありません。指板の下端からと、ナット(上駒)直下からの高さで各弦によって適正値がありますが、数値にも幅がありますので、その中で4弦の音量バランスやレスポンス、音の伸び方などが最適になるような高さに設計されることになります。

厚みは、共鳴胴とのバランスで設計されるのが標準的と思います。丁寧な技術者ですと、タップトーンや実際に弦を張ってから弓で弾いたり、弦をはじいたりして確認、また弦を外して駒を削って...という作業を何回も繰り返して調整することもあります。

日常のメンテナンス方法

駒は繊細なパーツですので、普段からも取り扱いに注意して気にかけてあげる必要があります。弦を替える時は、弦の溝に4Bなどの濃い鉛筆を塗るようにすると、滑りが良くなり溝の摩耗を防ぎます。調弦でペグを回したときは時どき駒の傾きに注意して、前傾してきたら適正な角度に戻してあげましょう。

長い間使用していると、どうしても反りが生じてくることがあります。多少の反りは音や弾き心地に関係はないと思いますが、大きく反った場合は交換してもらう必要があります。専門店などでは駒の材質に応じて値段が変わり、分数楽器とフルサイズでも価格が異なります。高ければ良いというわけではなく、良心的な楽器店ですと楽器との相性が取れるグレードの材質で交換作業をしていくれると思います。

*反り直しといって蒸気と熱などを当てて元の形状に戻す修理もありますが、この簡易修理はいずれまた反ってくる場合が多いと感じます。

最終更新 2023年7月19日

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フィッティングパーツ -材質と音色-

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写真左端の既製品を使用するのが一般的で、この状態から取り付ける楽器に合わせて、全体の厚みや高さが削られていきます。特に、駒脚を表板にぴたりと合わせて削ったり、ハートマーク部分や脚のくびれ部分の余分な肉厚をそぎ落としたりといったところは、弦楽器職人の方の技術とセンスが表れる部分と感じます。

写真の左が加工前、右の3枚はいずれも加工後の駒です。

ヴァイオリン駒
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加工前 (左) と加工後 (右3枚) の駒

メーカーによる材質硬さの違い

右3枚は、以前使用していたヴァイオリンに取りつけてもらったことのあるものですが、それぞれ異なる駒材メーカーのもので、左からオーベルト (Aubert)、ミロスタム (Milo Stamm)、デスピオ (Despiau) 社製です。

いずれも木材自体は楓材(メープル)で同じですが、各メーカーごとに材質の硬さに違いがあり、オーベルトを標準とするとデスピオはそれよりもやや硬く、ミロスタムはさらに硬い材質を使用していると聞きました。実際に触った質感でも、それを感じ取ることができるほどの違いがあります。

楽器本体との均整を取る

ヴァイオリン本体の木材(表板や裏板等)も材質の硬度が音色に反映されますが、駒材に関しても同様で、柔らかい材質は柔らかい音、硬い材質は硬い音になる傾向にあります。例えば、楽器本体の素性が硬質な音色の場合、柔らかい材質の駒を合わせ、反対に柔らかい音色の楽器の場合には硬めの材質の駒を合わせるなど、反する性質同士を合わせることで均整を取ることができると感じたことがあります。

また、材質だけでなく高さや厚みによっても、弦の押さえやすさはもちろん、弾き心地などにも影響を与えます。駒の高さについては、単に「低ければ/高ければ弾きやすい」というものではありません。指板の下端からと、ナット(上駒)直下からの高さで各弦によって適正値がありますが、数値にも幅がありますので、その中で4弦の音量バランスやレスポンス、音の伸び方などが最適になるような高さに設計されることになります。

厚みは、共鳴胴とのバランスで設計されるのが標準的と思います。丁寧な技術者ですと、タップトーンや実際に弦を張ってから弓で弾いたり、弦をはじいたりして確認、また弦を外して駒を削って...という作業を何回も繰り返して調整することもあります。

日常のメンテナンス方法

駒は繊細なパーツですので、普段からも取り扱いに注意して気にかけてあげる必要があります。弦を替える時は、弦の溝に4Bなどの濃い鉛筆を塗るようにすると、滑りが良くなり溝の摩耗を防ぎます。調弦でペグを回したときは時どき駒の傾きに注意して、前傾してきたら適正な角度に戻してあげましょう。

長い間使用していると、どうしても反りが生じてくることがあります。多少の反りは音や弾き心地に関係はないと思いますが、大きく反った場合は交換してもらう必要があります。専門店などでは駒の材質に応じて値段が変わり、分数楽器とフルサイズでも価格が異なります。高ければ良いというわけではなく、良心的な楽器店ですと楽器との相性が取れるグレードの材質で交換作業をしていくれると思います。

*反り直しといって蒸気と熱などを当てて元の形状に戻す修理もありますが、この簡易修理はいずれまた反ってくる場合が多いと感じます。

最終更新 2023年7月19日

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2022年08月21日