知っておきたいヴァイオリン名曲②

エルガー「愛の挨拶」

イギリスの作曲家エドワード・エルガー(1857-1934)は威風堂々の作曲者として有名です。

妻キャロラインとの婚約記念に贈った愛の挨拶(Salut d'amour)は、ヴァイオリンとピアノによる編曲(エルガー自身の)が残されており、コンサートで小品やアンコール・ピースとしてよく演奏される人気曲です。

E-dur(ホ長調)は明るく高貴な調性感を持ちます。冒頭、ピアノのシンコペーションからヴァイオリンの有名なメロディーが現れます。フレーズごとに抑揚をつけて、クレッシェンド(だんだん強く)、デクレッシェンド(だんだん弱く)と強弱を変化、テンポ感も音楽の流れに沿って変化をつけるといいですね。

中間部のフラジオレット(倍音を利用して口笛のような音色を出す奏法)では、ピアノパートに合わせて、弓の配分・速度をコントロールしてください。後半、accel e cresc.(だんだん強くかつ速く)からは、楽譜の指定通りG・D線で、サウンドポイント(弦と弓の接点)を駒寄りに合わせて、朗々と奏でましょう。

優美でうっとりとした曲想、曲が進むにつれて、感動が高まってくるような魅力的な作品ですね。

マスネ「タイスの瞑想曲」

ジュール・マスネ(1842-1912)はフランスの作曲家。彼の代表作、オペラ「タイス」第2幕の間奏曲として奏でられる、甘美で抒情的な名曲です。本来はソロ・ヴァイオリンとオーケストラのための楽曲ですが、ヴァイオリンとピアノ、あるいはフルートやチェロに編曲されたヴァージョンでも広く愛奏されています。

冒頭速度は、Andante(歩くような速さで)。伴奏パートD-dur 8分音符のアルペジオ(分散和音)にヴァイオリンの開始音はFis(ファ♯)から。単純明快ではなく、迷いを持って繊細な入り方、優美な音色で弾き始めれば、曲調に合った表現に近づきます。場面転換のポイントになるanimandでは、直前にテンポ感を遅くしましょう。piu mosso agitato F-E-E(ファ-ミ-ミ)が3回連続する箇所は、だんだんと熱量を高めて、同時にritardandoをかけて重みを増していきましょう。

楽譜のsul A, D, Gでは、指定の弦にてポジション感覚を意識することで、感情に訴えかけるような説得力のある音色をつくるための、サウンディングポイント(弦と弓の接点)、弓の速さ・圧力を調節してみてください。この曲にはどんな音色が合うか?と試行錯誤しながら練習できるのも、表現の幅が広いヴァイオリンの魅力ですね。

ヴィターリ「シャコンヌ」

イタリアのバロック期の作曲家、トマソ・アントニオ・ヴィターリ(1663-1745)。

「シャコンヌ」は彼の代表作とされていますが、ドイツの作曲家でヴァイオリニストのフェルディナント・ダーヴィッドがヴィターリの死後100年以上たった1867年に、教則本の中で編曲を加えて紹介したことで世に広く知られるようになりました。ヴィターリ自身の直筆譜が残っていないことから、作曲者不詳と解釈する専門家もいるようです。今日では、フランスの編曲家、レオポルド・シャルリエの「シャルリエ版」が広く用いられています。ロマン派の楽曲のような、演奏効果抜群の技巧的な面も併せ持ち、ヴァイオリニストにとって重要なレパートリーの一曲になっています。

冒頭8小節で示された和声進行が楽曲全体を通して何度も繰り返される「シャコンヌ(3拍子の舞曲)」様式に則って緻密に作曲されています。ヴァイオリン・パート始まりのg-moll(ト短調)4重音は、拍の頭で最高音G(ソ)が入るよう演奏しましょう。4分音符・2分音符など音価の長い音符は、拍感を持って音の方向性を示すことができるように演奏すると、緊張感を持続した表現が実現できますね。

中間部 con moto leggieroなど、スピッカート(弓を跳ねさせる)奏法が多用されるのもこの曲の特徴です。スピッカートで重要なのは、「弓自体が跳ねる性能を持っている」ということです。跳ねさせようと弓圧を高めるにつれて弓の自由度は低くなり、より跳ねにくくなるという悪循環が生まれます。スティック (棹)の反発力を利用することを意識し、手首から上腕までは脱力して、落ち着いて演奏しましょう。

後半 grandiosoからは、高音のオクターブ・ユニゾンが頻出、音程の跳躍も含みますから、ポジション感覚と1と4の指のフレーム感覚(距離的感覚)を何度も練習して、丁寧に習得していきましょう。ユニゾン下の音量を7割、上を3割など、下の音程を聴き取り易いように大きく弾き、上はファルセット(裏声)のイメージで軽く乗せるように奏でるといいですね。フィナーレは冒頭主題をピアノとともに奏でます。ヴァイオリン・ソロでの小カデンツァでは、変幻自在にアゴーギクをつけて。再び冒頭開始音と同じg-mollⅠの和音を奏でれば、壮大なスケールの物語が幕を閉じます。

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エルガー「愛の挨拶」

イギリスの作曲家エドワード・エルガー(1857-1934)は威風堂々の作曲者として有名です。

妻キャロラインとの婚約記念に贈った愛の挨拶(Salut d'amour)は、ヴァイオリンとピアノによる編曲(エルガー自身の)が残されており、コンサートで小品やアンコール・ピースとしてよく演奏される人気曲です。

E-dur(ホ長調)は明るく高貴な調性感を持ちます。冒頭、ピアノのシンコペーションからヴァイオリンの有名なメロディーが現れます。フレーズごとに抑揚をつけて、クレッシェンド(だんだん強く)、デクレッシェンド(だんだん弱く)と強弱を変化、テンポ感も音楽の流れに沿って変化をつけるといいですね。

中間部のフラジオレット(倍音を利用して口笛のような音色を出す奏法)では、ピアノパートに合わせて、弓の配分・速度をコントロールしてください。後半、accel e cresc.(だんだん強くかつ速く)からは、楽譜の指定通りG・D線で、サウンドポイント(弦と弓の接点)を駒寄りに合わせて、朗々と奏でましょう。

優美でうっとりとした曲想、曲が進むにつれて、感動が高まってくるような魅力的な作品ですね。

マスネ「タイスの瞑想曲」

ジュール・マスネ(1842-1912)はフランスの作曲家。彼の代表作、オペラ「タイス」第2幕の間奏曲として奏でられる、甘美で抒情的な名曲です。本来はソロ・ヴァイオリンとオーケストラのための楽曲ですが、ヴァイオリンとピアノ、あるいはフルートやチェロに編曲されたヴァージョンでも広く愛奏されています。

冒頭速度は、Andante(歩くような速さで)。伴奏パートD-dur 8分音符のアルペジオ(分散和音)にヴァイオリンの開始音はFis(ファ♯)から。単純明快ではなく、迷いを持って繊細な入り方、優美な音色で弾き始めれば、曲調に合った表現に近づきます。場面転換のポイントになるanimandでは、直前にテンポ感を遅くしましょう。piu mosso agitato F-E-E(ファ-ミ-ミ)が3回連続する箇所は、だんだんと熱量を高めて、同時にritardandoをかけて重みを増していきましょう。

楽譜のsul A, D, Gでは、指定の弦にてポジション感覚を意識することで、感情に訴えかけるような説得力のある音色をつくるための、サウンディングポイント(弦と弓の接点)、弓の速さ・圧力を調節してみてください。この曲にはどんな音色が合うか?と試行錯誤しながら練習できるのも、表現の幅が広いヴァイオリンの魅力ですね。

ヴィターリ「シャコンヌ」

イタリアのバロック期の作曲家、トマソ・アントニオ・ヴィターリ(1663-1745)。

「シャコンヌ」は彼の代表作とされていますが、ドイツの作曲家でヴァイオリニストのフェルディナント・ダーヴィッドがヴィターリの死後100年以上たった1867年に、教則本の中で編曲を加えて紹介したことで世に広く知られるようになりました。ヴィターリ自身の直筆譜が残っていないことから、作曲者不詳と解釈する専門家もいるようです。今日では、フランスの編曲家、レオポルド・シャルリエの「シャルリエ版」が広く用いられています。ロマン派の楽曲のような、演奏効果抜群の技巧的な面も併せ持ち、ヴァイオリニストにとって重要なレパートリーの一曲になっています。

冒頭8小節で示された和声進行が楽曲全体を通して何度も繰り返される「シャコンヌ(3拍子の舞曲)」様式に則って緻密に作曲されています。ヴァイオリン・パート始まりのg-moll(ト短調)4重音は、拍の頭で最高音G(ソ)が入るよう演奏しましょう。4分音符・2分音符など音価の長い音符は、拍感を持って音の方向性を示すことができるように演奏すると、緊張感を持続した表現が実現できますね。

中間部 con moto leggieroなど、スピッカート(弓を跳ねさせる)奏法が多用されるのもこの曲の特徴です。スピッカートで重要なのは、「弓自体が跳ねる性能を持っている」ということです。跳ねさせようと弓圧を高めるにつれて弓の自由度は低くなり、より跳ねにくくなるという悪循環が生まれます。スティック (棹)の反発力を利用することを意識し、手首から上腕までは脱力して、落ち着いて演奏しましょう。

後半 grandiosoからは、高音のオクターブ・ユニゾンが頻出、音程の跳躍も含みますから、ポジション感覚と1と4の指のフレーム感覚(距離的感覚)を何度も練習して、丁寧に習得していきましょう。ユニゾン下の音量を7割、上を3割など、下の音程を聴き取り易いように大きく弾き、上はファルセット(裏声)のイメージで軽く乗せるように奏でるといいですね。フィナーレは冒頭主題をピアノとともに奏でます。ヴァイオリン・ソロでの小カデンツァでは、変幻自在にアゴーギクをつけて。再び冒頭開始音と同じg-mollⅠの和音を奏でれば、壮大なスケールの物語が幕を閉じます。

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2023年06月03日